瓦棒葺きとは?瓦棒葺き屋根の施工やメンテナンスについてもご紹介

瓦棒葺きとは?瓦棒葺き屋根の施工やメンテナンスについてもご紹介

「瓦棒葺き屋根」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?「瓦」という字が用いられていることから瓦屋根の一種と誤解されやすいですが、瓦棒を用いた金属屋根のことを瓦棒葺き屋根と呼びます。

瓦屋根と比べると軽量で安価なため、1950年代以降各地の住宅で多く採用されてきましたが、近年では瓦棒葺き屋根は減少傾向にあります。

「なぜ人気がなくなったのか?」「瓦棒葺き屋根にはどのようなメリット・デメリットがあるのか?」と疑問に感じている方も多いことでしょう。

そこでこの記事では瓦棒葺き屋根に関する基礎知識に加えて、そのメリット・デメリットやメンテナンスに至るまで徹底解説しています。

「瓦棒葺き屋根の劣化サインが気になる」「屋根のリフォーム工事を検討中」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

この記事でわかること
  • 瓦棒葺き屋根とはどのようなもの?
  • 瓦棒葺き屋根のメリットとデメリットとは?
  • メンテナンスが必要な瓦棒葺き屋根の劣化サインとは?
  • 瓦棒葺き屋根のメンテナンス方法とは?
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瓦棒葺き屋根とは?

瓦棒葺き屋根とは?
そもそも、瓦棒葺き屋根とはどのようなものなのでしょうか?瓦棒葺き屋根とは金属屋根の一種です。

一定の間隔を置いて縦に設置した「瓦棒(心木)」に金属製の屋根材を取り付けていく工法を採るため、このような名前がつけられています。

以前は屋根材としてトタンが用いられることが多かったため、トタン屋根と呼ばれることも。ただ、トタン屋根の中には瓦棒を使用していないものもあるため、すべてのトタン屋根が瓦棒葺き屋根であるとは限りません。

また、トタンは安価で軽量であることから、長い間瓦棒葺き工法の屋根材として広く用いられてきましたが、経年劣化として錆が発生しやすいことから、現在ではガルバリウム鋼板にとって代わられています。

ガルバリウム鋼板はトタンと同様に安価で軽量な金属製ですが、錆に強いという特質をもっているため、瓦棒葺き屋根に限らず広く重宝されている屋根材です。

瓦棒(心木)とは

瓦棒(心木)とは金属屋根で使用する角棒状の芯材のことで、この瓦棒を使った屋根を「瓦棒葺き」と呼びます。

金属屋根には瓦棒があるタイプと瓦棒がないタイプがあり、瓦棒葺き屋根は前者に分類されます。

一定の間隔をあけて瓦棒を縦に設置し、それに屋根材を取り付けることで、効率よく屋根を固定することができるのです。

心木ありと心木なしの違い

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瓦棒(心木)のある金属屋根もあれば、瓦棒を使用しない金属屋根もあります。両者の違いはどのようなところにあるのでしょうか?

瓦棒のある屋根の場合、溝板の両脇に瓦棒が一定間隔でならんでおり、その上からキャップで留め付けて仕上げます。

ただし、瓦棒は腐食して倒壊するリスクがあるため、最近ではほとんど使われていません

他方で瓦棒なしの屋根では、瓦棒の代わりに通し吊子が入っています。溝板と通し吊子とキャップをはぜ掴みする工法によって、雨漏りを防ぐことができるのです。なお、瓦棒があるよりもないほうが、雨水を防ぎやすいと言われています。

瓦棒葺き屋根は減少傾向にある

瓦棒のありなしに関わらず、現在では瓦棒葺き工法そのものが採用されなくなっており、代わりに立平葺きが主流となっています

立平葺きでは2つの鋼板の両端を折り曲げ、巻き込んで接合するので瓦棒葺き屋根よりも外観がよいからです。

また、立平葺きは瓦棒を使用しないため腐食の心配がありません。

まとめると…
  • 瓦棒葺き屋根とは瓦棒(心木)に屋根材を取り付けた金属屋根のこと
  • 瓦棒葺き屋根では主にトタンやガルバリム鋼板が屋根材として用いられる
  • 瓦棒とは金属屋根で用いられる角棒状の芯材のこと
  • 瓦棒がないほうが雨漏りのリスクが低い
  • 現在では瓦棒葺きではなく立平葺きを採用するのが一般的

瓦棒葺き屋根のメリット

瓦棒葺き屋根のメリット
現在では廃れてしまったものの、瓦棒葺き屋根にはいくつものメリットがあります。以下では、瓦棒葺き屋根ならではの強みや利点について詳しく見ていきましょう

軽量で耐震性が高い

瓦棒葺き屋根では、トタンやガルバリウム鋼板といった屋根材が用いられます。こうした金属製の屋根材は瓦よりも軽量で建物への負担が少ないため、耐震性が高いのです。

万が一地震が発生した場合でも、揺れを最小限に抑えられるため、倒壊リスクを軽減することが可能。

また、屋根や住宅に重量負担をかけないという瓦棒葺き屋根の性質は、積雪量の多い地域にピッタリです。

雪の重みによって屋根が破損したり、あるいは住宅そのものが倒壊したりするリスクを軽減できます

緩勾配でも雨漏りしにくい

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複数の屋根材を使用した屋根の場合、継ぎ目部分にできる溝に雨水がたまりって水はけが悪くなり、雨漏りの原因となることがあります。

その点、瓦棒葺き屋根では継ぎ目のない屋根材を使用するため、緩やかな勾配の屋根でも雨漏りしにくいのです。

費用が安い傾向がある

瓦屋根のように職人が一枚一枚手作業で屋根材を張り付ける必要のある工法と違い、瓦棒葺き屋根の施工は非常にシンプルです。

あらかじめ工場で屋根材をカット・加工された金属製の屋根材を張り付ければ作業が完了するため、現場で特別な作業を施す必要はなく、また高い技術力も必要ありません。

施工方法が簡単だと人件費が浮くので費用が安くなり、また工期も短い傾向があります。「安くて早い」という特徴は、瓦棒葺き屋根ならではのメリットだと言えるでしょう。

まとめると…
  • メリット1:軽量で重量負担が少ないため地震に強い
  • メリット2:緩やかな勾配の屋根でも排水性を高められる
  • メリット3:費用が安く工期も短い

瓦棒葺き屋根のデメリットは?

瓦棒葺き屋根のデメリットは?
ここまで見てきたように、瓦棒葺き屋根にはメリットが少なくないものの、デメリットも多くあります。

そのデメリットゆえに、近年では瓦棒葺きを採用した屋根が減少傾向にあると言えるでしょう。

ここからは、瓦棒葺き屋根の主な欠点を4つピックアップして解説していきます

断熱性が低い

トタンやガルバリウム鋼板などの金属製の屋根材を使用するため、瓦棒葺き屋根は太陽光の熱を室内が伝わりやすくなっています。

また反対に、室内の温かさが外に逃げてしまうという性質も…。こうした断熱性の低さゆえに夏場の室温が高くなりやすく、冬は寒くなりやすいのです。

快適な室温を保ちにくいため、必然的にエアコン代が高くなると言えるでしょう。

遮音性が低い

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瓦棒葺き屋根は、瓦のように厚みのある屋根材を用いた屋根と違い、軽くて薄いトタンやガルバリウム鋼板を用いているため、遮音性が低いというデメリットがあります。

音が響きやすいため、雨音が気になることも…。通行量の多い道路に面した住宅の場合は、外からの騒音も気になりやすいでしょう。

錆びたり腐食したりする

瓦棒葺き屋根の屋根材は金属のため、錆が発生して見栄えが悪くなったり、劣化して穴があいたりすることも珍しくありません。

近年主流になったガルバリウム鋼板は金属製の屋根材の中でも比較的錆に強いものの、一昔前まで瓦棒葺き屋根に使用されていたトタンは錆に弱く、腐食のリスクが高いと言われています。

心木が腐食する

瓦棒(心木)を使用している場合は、木材部分が腐食して雨漏りにつながることもあることに要注意。

雨水が浸み込むことによって瓦棒の腐食が進行すると、屋根材が固定できなくなり、強風でズレたり吹き飛んだりする恐れがあります。

まとめると…
  • 欠点1:断熱性が低いため夏は暑く冬は寒くなりやすい
  • 欠点2:雨音などの騒音が気になりやすい
  • 欠点3:金属製なので錆や腐食のリスクが高い
  • 欠点4:瓦棒が腐食すると屋根材の固定力が損なわれる

瓦棒葺き工事の施工の流れ

瓦棒葺き工事の施工の流れ
近年では立平葺きに取って代わられるようになったものの、軽量で安価というメリットゆえに現在でも瓦棒葺き屋根を採用する住宅もないわけではありません。

瓦棒葺き工事の施行の手順は、以下の通りです。

  • 足場を設置する
  • 古くなった屋根の解体・撤去
  • 劣化した下地の補修
  • シート張りで防水性・断熱性を高める
  • 心木の設置
  • 板金の設置(必要ならば雪止めも)

ここからは、ひとつひとつの工程について詳しく見ていきましょう。

足場の設置

高所での作業となるため、まずは足場を設置します。足場の設置代は決して安くないため、可能ならばその他に必要な工事とまとめて施工するとお得になるでしょう。

既存の瓦棒葺き屋根を撤去

屋根 施工
既存の屋根の劣化が激しい場合は解体・撤去作業をおこない、新しい屋根材を張り付ける準備を整えます。

なお、軽度の劣化症状ならば既存の屋根を補修した上で、カバー工法を採用することが可能です。

下地を増し張りする

下地が劣化した状態で新しい屋根材を張り付けても耐久性に問題が出てしまうため、下地を増し張りする必要があります。

具体的には、劣化している箇所をシーリングなどで補修することになるでしょう。

シート張り

屋根 工事
瓦棒葺き屋根は断熱性が低く、また瓦棒が雨水の影響で腐食しやすいもの。こうしたデメリットを補うために、防水シートや断熱シートなどを張っていきます

心木の設置

下地の補修やシート張りが完了した後は、板金よりも先に心木を先に設置します。

板金設置

板金を心木に張りつけて固定し、並行して棟板金も設置します。なお、積雪量が多い地域では必要に応じて雪止めも設置したほうがよいでしょう。

瓦棒葺き屋根の劣化サイン

瓦棒葺き屋根の劣化サイン
瓦棒葺きに限らず、屋根には一定の耐用年数があり、それを超えると劣化症状が出やすくなります。

また、耐用年数であっても補修が必要な劣化症状が進行している場合もあるため、定期的に点検をする必要があるでしょう。

以下では、メンテナンスの目安となる瓦棒葺き屋根の劣化サインについてご紹介していきます

色褪せ

長期間紫外線や雨水にさらされることによって、塗料が色褪せを起こしてしまうことがよくあります。

塗装の変色は屋根そのものの耐久性に大きな悪影響を与えるわけではありませんが、屋根はもちろん家全体の見栄えが悪くなるため、塗り直しのメンテナンスをしておきたいところです。

チョーキング

塗装が劣化して粉状になっている状態のことを、チョーキングといいます。指で触った時にザラザラと粉状の塗料がつくため、劣化サインに気づきやすいでしょう。

チョーキングは即座に補修が必要なわけではありませんが、塗装が劣化を起こしているということは屋根材を塗膜で十分に保護できなくなり、雨漏りやひび割れなどのトラブルを招いてしまうということでもあります。

できれば早めに塗り替えをおこないましょう。

ひび割れ

屋根 破損
ひび割れとは、塗装が割れている状態のこと。髪の毛の細さほどの軽微なひび割れ(ヘアークラック)ならば、即座に大きなトラブルにつながるわけではありません。

ただし、徐々に症状が悪化したり、ひび割れた箇所から雨水が浸み込んでカビやコケの発生や雨漏りの原因になってしまうことも…。

ひび割れの程度がひどい場合は「構造クラック」と呼ばれ、屋根の耐久性に支障が出てしまうことに注意が必要です。

そうなる前に、シーリングなどで適切に補修をおこないましょう。

錆び

屋根材が錆びている状態も、瓦棒葺き屋根によくある劣化症状のひとつ。

最近では錆に強いガルバリウム鋼板が用いられるようになっていますが、一昔前は錆に弱いトタンが使用されていたため、後者の場合ならばなおさらこうした劣化症状が出やすいでしょう。

錆は屋根の外観を損ねるだけでなく、腐食を起こし屋根に穴をあけてしまう原因にもなりかねません。放置せず、早めの段階で補修をする必要があります。

まとめると…
  • 劣化サイン1:紫外線や雨水の影響で塗料が色褪せる
  • 劣化サイン2:塗料が劣化して粉状になる
  • 劣化サイン3:大小のひび割れを起こす
  • 劣化サイン4:錆が発生する

瓦棒葺き屋根のメンテナンス方法

瓦棒葺き屋根のメンテナンス方法
劣化サインが気になりはじめたならば、適切な段階でメンテナンスをおこないましょう。放置しておくと症状がひどくなり、より大掛かりで高額な補修工事をしなければならなくなってしまうからです。

以下では、瓦棒葺き屋根のメンテナンスの具体的な方法について見ていきましょう

塗装

色褪せなどの劣化症状に対しては、塗り替えのメンテナンスを行います。塗料の種類やグレードによっても異なってきますが、塗り替えの目安は10年に1度ほどです。

部分補修

破損した部位があれば、コーキング剤などで補修しましょう。

一定期間ごとに補修をするのではなく、破損が生じたならその都度すぐに補修することで、より深刻な劣化症状につながることを防げます。

重ね葺き

屋根 工事
屋根材が劣化した場合のより根本的なメンテナンスとして、重ね葺き(カバー工法)というものがあります。

既存の屋根材に新しい屋根材をかぶせる工法で、20〜30年に1度が目安。後述する葺き替えよりも費用を安く抑えられますが、既存の屋根材を撤去しないため重量負担がかかってしまうことに注意が必要です。

そのため、重ね葺きをおこなった屋根は二度と重ね葺きはできません。重量負担が増えれば増えるほど耐震性が低下し、地震発生時の倒壊リスクが高まってしまうからです。

少しでも重量負担を軽減するために、新しい屋根材は基本的に軽量なものしか使用できず、ガルバリウム鋼板のような金属製がよく用いられます

なお、腐食が進んで穴があいているなど、既存の屋根材の劣化症状や損傷が激しい場合は重ね葺きは採用できず、葺き替え工事をすることになります。

葺き替え

屋根材が非常に劣化した場合には、葺き替えを採用する必要があります。葺き替えとは既存の屋根を剥がして新しい屋根材に葺き替える工法のことで、目安としては20〜30年に1度です。

重ね葺きとは違い、既存の屋根の解体・除去という工程がプラスされるため、その分工事費用が高くなります。他方で、葺き替えよりも住宅への重量負担が軽減されるというメリットも。

重ね葺きでは基本的には軽量な金属製の屋根材しか使用できませんが、葺き替えならばある程度重量のあるその他の屋根材も使用可能です。

屋根材の選択肢が増えるというのは、葺き替え工事ならではの利点だと言えるでしょう。

まとめると…
  • 塗装:10年に1度を目安
  • 部分補修:破損したらすぐに補修する
  • 重ね葺き:20〜30年に1度、既存の屋根の劣化が非常に激しい場合は不可
  • 葺き替え:20〜30年に1度

瓦棒葺き屋根の特色を知ろう

今回は瓦棒葺き屋根について特集してきましたが、いかがでしたでしょうか。軽くて耐震性が高く、また安価で工期も短いことから瓦棒葺き工法は広く採用されてきましたが、現在では立平葺きに取って代わられてます。

錆や腐食のリスクが高く、他にも耐震性と価格の安さを両立できる工法が開発されたこともあり、瓦棒葺き屋根をあえて選ぶメリットはあまり大きくありません

ただ、トタンではなくガルバリウム鋼板を使用することで、錆や腐食のリスクを軽減することは可能です。また、既存の瓦棒葺き屋根にこうした劣化サインが出た場合は、カバー工法もしくは葺き替え工法で補修できます。

瓦棒葺き屋根のメンテナンスの際には複数の業者から見積もりを取って費用や施工内容を比較し、よりよい業者を選ぶための判断材料にされることをおすすめします。

 
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