シートで浸水を防ぐシート防水。屋根の防水工事を検討するうえで気になった人も多いのではないでしょうか。しかし、そもそもシート防水がどんな工事なのか、ほかの防水工事と比べてどんなメリットがあるのかは意外と知られていません。
そこでこの記事では、防水工事の基本からメリット・デメリット、注意点まで幅広く解説します。最適な防水工事を見つける参考にしてください。
- そもそもシート防水って?
- シート防水のメリット・デメリット
- どんな場合におすすめなの?
- 業者に依頼する際の注意点は?
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目次
そもそも「シート防水」とは?
そもそもシート防水とはどのようなことを言うのでしょうか。ほかにもいくつかの防水工事方法があるので違いをしっかり理解したうえで選びたいですよね。ということで、初めにシート防水の概要を見ていきましょう。
シート防水とは
シート防水とは、ゴム製や塩化ビニル製のシートによって浸水を防ぐ工事のことです。専用の機械や接着剤で施工箇所にシートを固定します。雨漏りしている穴にシートをかぶせるような処置を、本格的に工事で行うものだと考えると分かりやすいでしょう。ビルやマンションの屋上などに広く使われる防水工事方法です。
シート防水とその他の防水工事の違い
防水工事はシート防水・塗膜防水・アスファルト防水に大別されます。シート防水はほかの2つと違い、基本的に四角形の場所でしか使えません。陸屋根の防水工事などに使われるのが一般的です。
一方、塗膜防水は防水場所の形状を問いません。固形物であるシートを貼り付けるシート防水と違い、液体状の防水塗料を塗る工事だからです。したがって、形状が複雑なベランダなどでも使われます。
もう1つの防水工事であるアスファルト防水は、基本的に屋上に使われる方法です。上記の2種類と比べて耐久性が高い反面、重量があるため使える場所を選ぶのが難点です。
- シート防水=シートの貼り付けで水を防ぐ工事
- 四角形の場所にぴったり
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シート防水で使用するシートの種類
シート防水は、その名のとおりシートを使った防水方法です。では、そのシートにはどのようなものが使われるのでしょうか。シートによって価格や耐久性が異なるため、それぞれの特徴をよく把握してニーズにピッタリなシートを選ぶことが大切です。では、2種類のシートについて見ていきましょう。
塩ビシート
塩ビシートとは、塩化ビニル素材で作られたシートのことです。その防水シートを、接着剤などで下地に貼り付けることで防水工事を行います。
もう1つのシートであるゴムシートと比べて耐久性に優れているのが特徴です。衝撃や摩耗、紫外線などに高い耐久性を誇ります。ただし、物理的な衝撃で割れやすいのが難点です。
ゴムシート
シート状にした合成ゴムを、接着剤などで下地に貼り付ける防水工事です。軽量で伸縮性に富み、紫外線に強いのが魅力です。ところが、飛来物の衝突や鳥獣の影響など物理的衝撃に弱いことから、最近では塩ビシートに後れを取るようになりました。
- 塩ビシートは物理的衝撃に強い
- ゴムシートは紫外線に強い
- 最近は塩ビシートが主流
シート防水のメリット
先ほど紹介したとおり、防水工事にはシート防水のほかにも塗膜防水やアスファルト防水があります。では、それらの方法に対してシート防水はどのような点が優れているのでしょうか。最適な防水工法を見極めるためにしっかり確認しておきましょう。
耐久性が高い
シート防水はアスファルト防水には劣るものの、塗膜防水と比べると耐久性に優れています。塗膜防水には主にウレタン防水とFRP防水がありますが、どちらも耐久年数は10~12年程度と言われています。それに比べて、シート防水はゴムシートで10~15年、塩ビシートで10~20年です。
価格が安い
シート防水は比較的安価です。塩ビシートなら約3,500~7,500円/㎡、ゴムシートなら約2,500~7,000円/㎡くらいの価格で工事できます。
それに比べて、塗膜防水のウレタン防水は4,500~7,000円/㎡、FRP防水は6,000~8,000円/㎡、アスファルト防水は5,500~8,500円/㎡程度の費用を要します。
広い範囲を施工しやすい
シート防水は、改修時には古い防水材の上にそのままかぶせて工事できるため、工期が短いのが特徴です。また、その特徴から、広範囲を施工するのに適しているといえます。では、それぞれの防水工法の工期を一覧表で比べてみましょう。
防水工法 | 工期 |
シート防水 | 2~4日 |
FRP防水(塗膜防水) | 1~2日 |
ウレタン防水(塗膜防水) | 3~10日 |
アスファルト防水 | 5~7日 |
- 耐久性が高い
- 価格が安い
- 広範囲に施工しやすい
シート防水のデメリット
ここまではメリットを紹介してきましたが、シート防水にあるにはメリットばかりではありません。デメリットを理解せずに実施してしまうと、思わぬ問題が発生するかも…。ということで、代表的な三つのデメリットをご紹介します。
複雑な形状の場所には適していない
シート防水におけるシートは、一般的に「シート」と聞いて思い浮かべるものと同じ、薄い膜です。それを貼り付けることで防水工事を行います。
その様子をイメージしてもらえると分かりやすいですが、シートの形状に合致した部分にしか施工できません。したがって、ベランダのように形状が複雑な施工箇所には不向きです。そういう場所に防水工事を施したい場合は、液状の塗料で施工する塗膜防水のほうが向いています。
騒音がする恐れがある
工事にはトラブルがつきものです。たとえば、アスファルト防水はアスファルトを熱で溶かす工程があるため、その際に悪臭が発生します。
シート防水にはそうした悪臭被害はありません。一方、騒音が予想以上に大きくて困ったという例はあります。機械を使う工法を採用する場合、シートを下地に固定するために、金具を打ち付ける必要があるからです。ドリル音などもするための、施工するビルやマンションの最上階にいる人にとってはかなりうるさく感じられることがあります。
つなぎ目を十分に接着しないと雨漏りする
シート防水で気をつけなければならないことの一つが、つなぎ目の接着具合です。つなぎ目の接着が甘いと、強風などの影響でそこからシートがはがれることがあります。したがって、施工業者がつなぎ目の処理をきちんとしてくれたかどうかは、重要な確認事項といえます。
ただ、シート防水におけるつなぎ目の処理は難易度の高い工法です。そのため、ある程度施工経験の豊富な業者でなければそもそも難しいことがあります。業者選定の段階でこの点に留意しておくことが大切です。
- 複雑な場所には不向き
- 工事中に騒音が生じる可能性がある
- 接着が甘いと雨漏りのリスクがある
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シート防水はどんな場所におすすめ?
シート防水のメリットとデメリットをこれまで見てきました。では、結局シート防水はどんな場合に向いているのでしょうか?メリット・デメリットを踏まえたうえで、シート防水が適している場所を見ていきましょう。
平坦な屋上
シート防水のシートは、一般的にシートと聞いて思い浮かべる通りの平坦なものです。そのため、平坦な屋上での防水工事に適しています。
逆に凹凸が多く複雑なところには向いていません。無理をしてシート防水を施しても、隙間から水が入り込むなどの問題が生じます。凹凸があるところには塗膜防水を検討しましょう。
広い場所
シート防水は工期が短いことは先ほど紹介しました。したがって、広い場所に施工するのにも適しています。一般的なアパートやビルに施工するのならおよそ2~4日程度で終わるといわれています。
- 平坦な屋上に向いている
- 広い場所にもぴったり
シート防水を検討すべき症状とは?
どのタイミングで防水工事をすれば良いのか、見極められない人も多いのではないでしょうか。しかし、「今こそシート防水を検討すべき」というサインになる症状があるのです。では、その症状をいくつかご紹介します。
ふくれ
シートはピッタリと下地に張り付いていなければ水を完全に防げません。そのため、シートの一部がふくれて隙間ができているようであればシート防水を行うべきタイミングと言えます。
ひび割れ
防水シートはちょっとやそっとの衝撃では破れません。しかし、どれほど頑丈でも経年劣化は避けられないものです。ひび割れが見られるようになったら新たに工事を施す時期だと考えましょう。
剥がれ
シートは剥がれることがあります。この場合もシート防水をすべきタイミングだとみなしましょう。
ただし、ほんの一部だけが剥がれているのであれば、その部分を修繕すれば事足りることもあります。早めに業者に相談してみましょう。
雨漏り
どれほど見た目に異常がなくても、実際に雨漏りが発生しているのであれば意味がありません。早めに施工して問題を解決しましょう。
シート防水の工法と施工手順
一口にシート防水といっても、主に2つの工法に分けられます。単純に方法が違うだけでなく、それぞれに向き不向きがあるので要チェックです。では、施工手順を詳しく見ていきましょう。
密着工法
密着工法とは、接着剤を使ってシートを下地に貼り付ける工法です。
シートと下地の間に隙間がないため、耐風圧性が高いのが特長です。一方、もう一つの機械固定工法と比べ、下地の状態に左右されやすいのが難点となっています。では、その施工手順をご紹介します。
- 下地の清掃
- 下地処理(下塗り)
- 接着剤の塗布
- シートの貼り付け
- シートのつなぎ目を接着する
- 立ち上がり(床面に対して垂直になっている箇所)にシートを貼る
- シート同士の隙間を接着する
機械固定工法
機械固定工法は、下地に鋼板を取り付けて、その鋼板を覆っている皮膜を溶かすことで防水シートと下地を接着させる方法です。絶縁工法や脱気工法、通気工法などと呼ばれることもありますが、基本的にどれも同じ工法を指しています。
密着工法と違い、下地の影響を受けにくいのが特長です。ただし、鋼板を取り付ける際に騒音が発生するため、工事中のトラブルには気をつけましょう。
では、機械固定工法の施工手順を紹介します。
- 下地の処理・補修を行う
- 絶縁用シートを敷く(湿気を逃がすため)
- シートを固定する鋼板を取り付ける
- シートを貼り付ける
- シートを接着する
- 施工箇所の端や排水溝に役物を取り付ける
- 溶剤溶着または熱融着シート同士の隙間を接着する
シート防水の施工にかかる費用は?
ここまではシート防水の特徴や施工方法を見てきましたが、いざ施工するとなると気になるのはその料金ですよね。どれほど優れた工事でも価格次第では「ちょっと…」ということになりかねません。
ということで、シート防水にかかる費用を一覧表にまとめてみました。以下に記載するうち高圧洗浄~末端処理は1平方メートル単価の相場なので、施工場所の広さを基に価格を算出してみましょう。
施工内容 | 費用 |
高圧洗浄 | 300円 |
下地処理 | 100円 |
平坦部シート防水 | 6,500円 |
立ち上がりシート防水 | 5,500円 |
末端処理 | 2,000円 |
新規脱気筒設置(1箇所) | 15,000円 |
改修ドレン(2箇所) | 13,000円 |
脱気筒の設置は機械固定工法のみ行います。密着工法ではこの費用は省いて計算しましょう。
また、これらのほかにもこまごまとした費用がかかることがあります。たとえば、工事で発生した廃材の処分にも費用が掛かります。どのくらい発生するかは下地の状態などによって変わりますが、10,000~30,000円くらいはかかると見積もっておいた方がよいでしょう。
さらに、手続きや現場監督に要する人件費なども発生します。こちらの費用もケースバイケースですが、大まかに全体の費用の10%くらいが加算されると考えましょう。
シート防水の劣化症状とメンテナンス方法
せっかくシート防水を施したのなら、できるだけそれを長持ちさせたいですよね。ということで、次はシート防水のメンテナンス方法を紹介します。劣化症状が見られたら早めにメンテナンスし、シートの寿命を延ばしてあげましょう。
シートのふくれ
シートの膨れは、下地に入り込んだ水分が熱で蒸発し、その水蒸気がシートを押し上げることで発生します。逆にいえば、その水蒸気を取り除けば膨れを解消できるということです。そのため、脱気筒を使って水蒸気を逃がすのが簡易的なメンテナンスとなります。
ひび割れ
塩ビシートは、塩化ビニルという素材に可塑剤を添加して作られたものです。ところが、そうして高められた可塑性は年月と共に失われていきます。ひび割れはそのせいで生じるのです。輪ゴムが古くなると、簡単にちぎれてしまう様子を思い浮かべると分かりやすいですね。
したがって、ひび割れが生じたらシートが古くなっているため、シート防水工事を行うべきタイミングといえます。しかし、ほんのわずかなひび割れ程度であれば、パッチ処理で対処可能です。ひび割れ部分を塞いで水の浸入を防ぎましょう。
シートの剥がれ
シートを貼り付けるという工法の特性上、何らかのきっかけでシートがはがれる事態を完全に避けることはできません。経年の影響や強風、鳥獣などがもたらす衝撃でシートの接合部がはがれることがあります。
広範囲にわたる剥がれであれば、ちょっとしたメンテナンスでは対処できません。しかし、わずかに剥がれかけているだけであれば、熱溶着などで部分的な接着を施すことで対処可能です。
雨漏り
雨漏りが発生している場合の原因はさまざまです。シートがはがれた部分から水が入り込んだのかもしれませんし、ひび割れが広がって水の浸入を許したのかもしれません。
いずれにしても、雨漏りが見られたら大掛かりな対処が求められます。まずは原因を突き止めるところか始めましょう。雨漏りが発生している部分の上にあたる部分に、異常がないか点検します。異常を発見できたら、その異常の程度に応じてシートの補強やパッチ処理、改修工事などで雨漏りの原因を排除しましょう。
続いて、雨漏りが発生した屋内にも対処を行う必要があります。内側が腐食していたりカビが発生している可能性があるため、全面的に修理して綺麗な状態に戻しましょう。
- ふくれ→脱気筒で対処
- ひび割れ→パッチ処理で塞ぐ
- 剥がれ→狭い範囲なら部分的な接着で対処可能
- 雨漏り→大掛かりな対処が必要
シート防水の施工を依頼する際の注意点!
ここまでの知識を踏まえたうえで、いざ行動に移そうとしたときに最初に着手しなければならないのが、業者への依頼です。しかし、初めて防水工事を依頼する場合、どんなことに気を付けたらいいのか分かりませんよね。
そこで、防水工事を業者に依頼する際の主な注意点を2点紹介します。
業者の施工実績を確認する
業者によって施工実績が異なります。そして、当然ながら実績豊富な業者ほど信頼できます。したがって、まずは充分な実績を持っている業者を選定しましょう。
特に、自分が検討している施工方法の実績が豊富かどうかに着眼する必要があります。シート防水を検討しているのなら、塗膜防水やアスファルト防水の実績が豊富な業者を選んでも仕方がありません。適切にシートを張る技術がないと施工後すぐにシートがはがれてしまうなど、トラブルが生じるリスクが高くなります。
相見積もりをする
1社だけに見積もりをするとぼったくられる危険があります。逆に、相場より安すぎて、きちんとした施工をしてもらえないリスクもあります。
そうした問題を避けるには相見積もりをしましょう。相見積もりとは同じ条件で複数の業者に見積もりを依頼することです。最低でも3社で相見積もりすれば、適正な価格の業者を選べるでしょう。
- 施工実績が豊富な業者を選ぶ
- 相見つもりで適切な価格の業者を選ぶ
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シート防水は安価で丈夫!
シート防水は耐久性に優れ、比較的安いのが特長です。広範囲に施工するのにも向いています。
しかし、剥がれやひび割れなどのトラブルを完全に避けることはできません。そのため、適切な業者の選び方やメンテナンス方法を知っておくことが大切。信頼できる業者を選び、安全にシート防水を施しましょう。
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