ニュースなどで「アスベスト」問題について見聞きしたことがある方も多いのではないでしょうか。石綿とも呼ばれるアスベストは、20世紀から世界各国で建築材として盛んに用いられてきました。
しかし、1970年代から徐々にその人体への有害性が認識されるようになり、現在日本国内では原則として製造や建築材としての使用が禁止されています。
新しく建てられた住居ならばアスベストは使用されていませんが、アスベストの使用が禁止される前に建てられた住居の場合、屋根などにアスベストが含まれている可能性があります。
そこでこの記事では、アスベストが人体に及ぼす悪影響に加えて、アスベストが含まれる屋根の見分け方などについて徹底解説しています。
「うちの屋根はアスベストが含まれているだろうか?」と不安に感じている方は、ぜひ最後までご覧ください。
- アスベストの危険性と人体への影響とは?
- スレート屋根にアスベストが含まれているとどのようなリスクがある?
- アスベストを含むスレート屋根の見分け方とは?
- アスベスト屋根のリフォーム方法と費用は?
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目次
そもそも「アスベスト」とは?
アスベストとは、「石綿(いしわた・せきめん)」と呼ばれる繊維状の鉱物のこと。古代から、人間の生活の中でさまざまな形で用いられてきたものでもあります。
近現代に入ると世界各地で建築材として重宝されるようになり、日本でも多くの住居にアスベストを含むスレートの屋根材などが使用されてきました。
「ニュースや新聞などでなんとなくアスベストが危険であることは分かっているけれど、具体的にアスベストがどのようなものかは知らない」という方も多いはず。
そもそも、アスベストとはどのようなものなのでしょうか?また、人体にどのような悪影響と危険性があるのでしょうか?
ここではまず、アスベストの基本情報について確認しておきましょう。
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2004年に製造が原則禁止とされた素材
アスベストは加工や研磨時に非常に微細な飛沫が生じるという特徴をもっており、それを吸い込むと健康被害が生じる有害な物質です。
その結果、日本では1975年にアスベストを建築現場で吹き付けとして使用することが原則として禁止されました。
しかし、あくまで飛沫が大量に生じる吹き付けが禁止されただけであって、その後もアスベストを含む建築材は多くの住居で使用されたのです。
アスベストの恐ろしさは、飛沫を吸い込んですぐに近くできる健康被害が生じるわけではなく、長い間に渡って密かに病状が進行し、数十年後に気づいた時には深刻な症状に悪化しているという点にあります。
数十年もの潜伏期間を経て深刻な健康被害が発覚するケースが認知され、社会問題となったことで、ようやく2004年に製造に関しても原則禁止となりました。
アスベストが人体に及ぼす影響
アスベストは建築時や住居の解体時に非常に微細な粒子となるため、それを吸い込むとさまざまな健康被害が生じることがわかっています。
現場で働く作業員はもちろんのこと、アスベストを取り扱う工場周辺の住民も長年にわたってアスベストを吸い込んだことが原因で、多くの被害が生じてきました。
では、アスベストは具体的に人体にどのような悪影響を及ぼすのでしょうか?
- 肺がん
- 肺線維症(アスベスト肺)
- 悪性中皮腫
アスベストの飛沫を長年吸い込んできた作業員が肺がんを発症するケースが多く報告されています。発症まで長ければ40年近くの時間があり、肺がんであることが発覚した時にはすでに重度に陥っているというケースも少なくありません。
肺線維症は、アスベストを吸い込むことで肺が繊維化して生じる病気であり、「アスベスト肺」とも呼ばれています。
また、アスベストは肺だけでなく、心臓、胃や肝臓などさまざまな臓器にもダメージを与えるため、悪性中皮腫と呼ばれる悪性の腫瘍の原因になります。
悪性中皮腫に関しても最大で50年ほどの潜伏期間があると言われており、20代のときに工事現場でアスベストを吸い込んだことが原因で、60代・70代になって発病することもあるのです。
- アスベスト=飛沫が生じやすく吸い込むと有害な危険物質
- 日本国内では1975年に吹き付け禁止、2004年には製造禁止になった
- 潜伏期間が長く、肺がん等の深刻な健康被害をもたらす
アスベストを含むスレート屋根の危険性
2004年に原則として製造が禁止されたアスベストですが、それまでは断熱材や防音材に加えて、スレート屋根にも多く使用されていました。
屋根材の中でもスレートは人気が高く、広く普及しているものですが、アスベストが禁止される前に建築された住居には、アスベストを含むスレート屋根が使用されている可能性があります。
ここからは、アスベストを含むスレート屋根には具体的にどのような危険性があるのか解説していきます。
アスベストの危険レベル
まずは、アスベストの危険レベルについて確認しておきましょう。屋根の吹き付けの際にアスベストが用いられている場合、非常に危険です。
吹き付けによるアスベストの健康被害は古くから知られており、2004年に製造が禁止される30年ほど前の1975年に原則禁止となっているほど。
とりわけマンションなど集合住宅の駐車場では、アスベストが吹き付けの際に使用されることが多かったのです。こうした建物のリフォームや解体をおこなう場合は、適切な対処法を講じなければ、人体に悪影響が生じるリスクが高いと言われています。
- 危険レベル高:吹き付けのアスベスト材
- 危険レベル中:アスベストを含む保温材や断熱材
- 危険レベル低:その他の成形されたアスベスト含有材
また、アスベストを含む保温剤や断熱材を使用している場合も、危険度はやや高いと言えるでしょう。
短期的にすぐに健康被害が生じる可能性は低いとされていますが、長期にわたってアスベストの飛沫を吸い込むことで、肺を中心とする臓器に蓄積されていき、肺がんなどの深刻な病気に羅漢するリスクがあります。
他方で、その他の成形されたアスベスト含有材の場合は、人体への危険性は比較的低いとされています。
というのも、アスベストは存在そのものが人体に悪影響を及ぼすというよりも、加工や施工・解体時にその微細な粒子の飛沫を吸い込んでしまうことが危険だからです。
解体以外で飛散する可能性は低い
よほど古い住居でない限り、既存の住居で一般的に使用されてきたアスベスト含有のスレートは危険度レベル3に該当します。
解体しなければ、基本的にはアスベストの粒子が飛散する危険性は低いため、すぐさま何らかの措置を講じなければいけないというわけではありません。
即時撤去を勧める業者には注意が必要
アスベストを含む屋根材を使用している場合、既存の屋根をすべて撤去した上で安全な屋根材でリフォームをしなければならないのでしょうか?
実は、必ずしも撤去が必須というわけではありません。たとえば、アスベストを含む既存の屋根材の上から安全な屋根材を重ねる「カバー工法」で封じ込めることも可能なのです。
「お宅の屋根にはアスベストが含まれているから、即時撤去をしなければ危険だ」とすぐに契約を迫ってくる業者には警戒したほうがよいでしょう。
ただし、既存の屋根を撤去せずにカバー工法をおこなう場合は、どうしても屋根や住居に重量負担がかかってしまい、耐震性が低下しやすいことにも要注意。負担を少しでも防ぐために、軽量な屋根材を選ぶ必要があります。
- アスベストの使用方法によって危険レベルが異なる
- 一般的なアスベスト含有の危険度は低く、解体時以外は飛沫吸引のリスクも低い
- 即時撤去を口実に早急な契約を求める業者には要注意
アスベストを含むスレート屋根の見分け方
2004年にアスベストの製造が原則として禁止されたため、基本的にそれ以降の新築の住居であれば、屋根材にアスベストが含まれている可能性はほぼないと言えるでしょう。
他方で、それ以前に建てられた住宅の場合、アスベストを含むスレート屋根を使用している可能性があります。
そう聞くと、「我が家は大丈夫?」と不安に感じる方も少なくないはず。そこでここからは、アスベストを含むスレート屋根の見分け方についてご紹介していきます。
建設された年代
我が家の屋根にアスベストが含まれているかどうかの最も簡単な見分け方が、いつ建築されたかを確認するということです。
前述の通り、アスベストを含む建築材の製造は2004年に法律で原則として禁止されています。特に2012年3月以降はアスベストを含む建築材の製造がより厳しく禁止されるようになりました。
スレート材の場合は、2005年以降に製造された商品ならば基本的にアスベストを含んでおらず、心配ないと言えるでしょう。
逆に言えば、2004年以前に建てられた住居の場合、アスベストを含む屋根材が使用されている可能性があります。
とりわけ1970年代から1990年代に建てられた住居のスレート材にはアスベストが多く含まれている可能性があるため、解体時には細心の注意が必要になるでしょう。
屋根の素材
ご自宅の屋根にどのような素材が用いられているのかを調べることで、アスベストの含有の有無を見分けることも可能です。
2004年以前に製造された屋根材のうち、基本的にはスレート屋根とセメント瓦がアスベストを含んでいたと言われています。
他方で、2004年以前に製造されたものであっても金属製の屋根材やや粘土瓦、コンクリート瓦にはアスベストは含まれていません。
屋根材の商品名・品番
自宅の屋根にどのような素材が使用されているのか正確に把握できる人は、そう多くないでしょう。
「うちの屋根にはアスベストが含まれているのだろうか?」と不安ならば、施工業者や建築士などに問い合わせをおこない、屋根材の商品名と品番を確認してみてください。
メーカーによってはアスベスト入りのスレートの型番を公開している場合があるので、それを通じてアスベストの含有の有無を確認できます。
- 2004年以降に建てられた住居はアスベスト含有の心配なし
- 2004年以前のスレート屋根とセメント瓦にはアスベスト含有の可能性あり
- 商品名・品番でアスベスト含有の有無を確認できるメーカーも
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アスベストを含む代表的なスレート屋根
法律で製造が禁止される2004年以前に作られたスレート屋根に関しては、アスベストを含んでいる可能性があります。
以下ではアスベストを含む主なスレート屋根のメーカーと商品について解説していきますので、ご自宅に該当しないかどうかぜひチェックしてみてください。
株式会社クボタ「アーバニー」
「アーバニー」は、1982〜1994年までクボタが製造していたスレート屋根。
スレート屋根の中でも人気の高いシリーズ「カラーベストコロニアル」の一種です。
積水化学工業株式会社「セキスイかわらU」
1975~1990年に積水化学工業が製造していた人気の屋根用化粧スレート商品の一つが、「セキスイかわらU」です。
耐久性が高く軽量であることから、カバー工法の際にもよく使用されてきました。1990年8月以降はアスベストを含んでいない新たな「セキスイかわらU」が製造されるようになりましたが、2007年には販売中止に至っています。
関西スレート株式会社「ダイケンかわら」
「ダイケンかわら」は、関西スレート株式会社が1975年~1982年に製造していたスレート素材です。
製造期間は7年と短期ではありますが、アスベストの含有量は10%であり、解体時のリスクが高い屋根材だと言えるでしょう。
- 「アーバニー」:製造期間1982-1994年
- 「セキスイかわらU」:製造期間1975-1990年
- 「ダイケンかわら」:製造期間1975-1982年
アスベストを含むスレート屋根のリフォーム方法
もしも自宅の屋根にアスベストを含む屋根材が使用されている場合、どうすればよいのでしょうか?
ここからは、アスベストを含むスレート屋根のリフォーム方法の詳細について解説していきます。
葺き替え工事
葺き替え工事では飛沫を吸い込まないように適切にアスベストを除去した上で、既存の屋根材を撤去し、新しい屋根材を設置します。
アスベストが除去できて安全性が高まることに加えて、屋根の内部の破損も補修できるというメリットがあります。
他方で、既存の屋根をすべて撤去して新しい屋根材に取り換えるため、価格が高くなるというデメリットも。30坪における費用の相場は160〜260万円ほどです。
また、施工時にはアスベスト除去専門の業者が必須になります。
カバー工法
カバー工法は、既存の屋根材を新しい屋根材で覆い隠すというリフォーム方法。アスベストごと新しい屋根材で覆い隠されるので、安全です。
アスベストを除去する作業なしに新しい屋根材を取り付けられるため、葺き替えより費用が安く、工期も短縮できる点がメリットとして挙げられるでしょう。
ただ、カバー工法では屋根内部の補修はできませんし、塗装より費用が高くなってしまいます。30坪における費用の相場は120〜240万円ほど。
加えて、カバー工法は1回しかできないため、次回のリフォームではアスベストの除去が必須になるというデメリットも…。
屋根塗装
屋根塗装はアスベストの除去の必要がなく、既存の屋根を塗装するため安全性が高いリフォーム方法だと言えるでしょう。
費用が安く、30坪における費用の相場は40〜70万円ほどであるという長所がある一方で、屋根材を変えないため、破損などのは対処できないという短所もあります。
結局リフォーム方法はどれを選ぶべき?
表面的な塗装剥がれならば、塗装だけで問題ありません。アスベスト除去をせずに屋根材を変えたいならば、カバー工法を選ぶとよいでしょう。
他方で、既存の屋根のアスベストを取り除きたいならば費用は高くなりますが、葺き替えがベストです。
- 葺き替え:アスベストの除去と屋根内部の補修が可能、費用が高い
- カバー工法:アスベストの除去が不要、次回リフォーム時は葺き替え必須
- 塗装:アスベストの除去が不要で安価、補修はできない
アスベスト屋根のリフォーム業者の選び方
アスベストを含む屋根のリフォームをおこなうにあたって大切なのが、信頼できる優良な業者を見極めるということ。
そこで以下では、リフォーム業者の選び方のポイントについてご紹介していきます。
アスベストに関する資格を持っているか
まずチェックしたいのが、アスベストの除去に関する資格の有無です。「石綿取扱作業従事者の特別教育」という資格を持っている業者を選びましょう。
資格がない人物が除去作業をすることは危険性が高いため、法律で禁じられています。
アスベスト屋根の工事には補助金が支給される?
アスベスト屋根のリフォーム工事には国からの補助金を利用できますが、対象は断熱材などの吹き付けのみです。
ただし、自治体でアスベスト建材に対する補助金があるケースもあるので、お住まいの自治体に問い合わせてみるとよいでしょう。
アスベストの除去実績が豊富か
「石綿取扱作業従事者の特別教育」を取得している業者であっても、アスベストの除去をほとんどしたことがなければ、安全面・技術面で疑問符がついてしまいます。
安心してリフォームを依頼できる業者かどうかを見極めるためには、過去に何件のアスベスト除去を行ったのか確認することも必要でしょう。
相見積もりをする
業者によって、リフォーム費用は大きく異なります。そこでおすすめしたいのが、業者を比較できる相見積もりをおこなうということ。
複数の見積もりを比較することで、適切な施工内容を適切な価格でおこなってくれる業者を見極めましょう。
- 「石綿取扱作業従事者の特別教育」の資格が必須
- 国や自治体の補助金が受けられるか確認する
- アスベスト除去の実績豊富な業者を選ぶ
- 複数の業者から見積もりをとって比較・検討する
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アスベストを含まないスレート屋根にも問題あり?
ここまではアスベストの危険性について詳しく見てきましたが、ではアスベストを含まない屋根材ならば安全だと言えるのでしょうか?
実は、必ずしもそうとはかぎりません。ここからは、アスベストを含まないスレート屋根に起こりうる問題点について解説していきます。
不具合が起きやすい
かつてアスベストが建築材に多く用いられたのは、耐久性を高める効果が大きかったからです。
現在はアスベストを使用せずとも耐久性の高い屋根材の製造が可能になりましたが、10年以上前のノンアスベスト素材だと不良品が多いと言われています。
耐久性が低い
アスベストが禁止された直後には、アスベストの代替となる素材が見つけられず、性能が急激に落ちたスレートも少なくありません。
近年開発されたノンアスベスト素材ならば耐久性に問題はありませんが、アスベストの製造が禁止された2004年直後に製造されたノンアスベスト素材は耐久性が低いものもあります。
- ノンアスベスト素材でも問題がないわけではない
- 問題点1:従来のアスベスト素材と比べると不良品が多い
- 問題点2:2000年代前半のノンアスベスト素材は耐久性が低い
アスベストを含まない代表的なスレート屋根
アスベストが禁止された直後に製造されたスレート屋根は欠点があるものも少なくありませんでしたが、最近ではノンアスベストでも優秀な製品が多く登場しています。
そこでここからは、アスベストを含まない主要なスレート屋根についてチェックしていきましょう。屋根のリフォームを検討中の方は、屋根材選びの際にぜひご参考ください。
「コロニアルクァッド」ケイミュー株式会社
屋根材の大手メーカーとして有名なケイミューからは、ノンアスベストのスレートとして「コロニアルクァッド」が販売されています。
スレート屋根の代名詞とも言える、コロニアルシリーズの人気商品です。
「遮熱グラッサ」ケイミュー株式会社
同じくケイミューから販売されている「遮熱グラッサ」もコロニアルシリーズの1つで、遮熱性能に優れた商品です。
独自のグラッサコートによって熱が室内に伝わりにくくなるため、夏場でも涼しく快適に過ごせるでしょう。
「パミール」ニチハ株式会社
ニチハの「パミール」は、アスベストの製造禁止に伴ってノンアスベスト素材として1996年から2008年まで販売されていた商品。
しかし、耐久性に問題があることが判明し、パミールを使用した屋根が短期間で修繕を余儀なくされるケースが発生したことから、現在は製造中止になっています。
このような理由から、パミールの利用は推奨されません。
- コロニアルクァッド:人気商品で耐久性が高い
- 遮熱グラッサ:遮熱性が高く夏場でも室内の涼しさをキープ
- パミール:耐久性に問題点があり利用は非推奨
アスベスト屋根はリフォームを検討しよう
今回はアスベストを含む屋根材について特集してきましたが、いかがでしたでしょうか?
アスベスト屋根は、解体時などに小さな粒子が空気中に飛散し、それを吸い込むことによって肺がんなどの恐ろしい病気を発症するリスクがあります。
2004年には、アスベスト含有の建築材の製造が法律で禁止されました。しかし、それ以前の屋根にはアスベスト含有の屋根材が使用されている可能性があります。
ご自宅の屋根材にアスベストが含まれていないかどうかを確認した上で、もしもアスベスト屋根であることが判明したならば、信頼できる業者に依頼をしてリフォームをおこないましょう。
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